「対立」と「協力」を行き来する学問(高校生向け・国際関係編)
EE式 RQ入り口3型 × RQ出口4型で “世界のニュースを構造で読む”
■ はじめに
国際関係は、「対立」と「協力」を行き来する学問です。
戦争や紛争、難民、貿易摩擦、感染症、気候変動、AIのルールづくり…。
国際ニュースは、どれも大きくて難しそうに見えます。
でも国際関係が見ているのは、出来事そのものではなく、
「なぜ対立が生まれるのか」と「なぜ協力が成立するのか」という関係のメカニズムです。
同じ問題を前にしても、
- 協力できる国と、できない国がある
- 支援が届く地域と、届かない地域がある
- 合意できるルールと、まとまらないルールがある
この「差」がどこから生まれるのかを、
歴史・利益・価値観・制度・力関係の組み合わせで読み解くのが国際関係です。

◆ 国際関係は「正しさ」より「構造」を扱う
国際ニュースは、つい「どっちが正しいか」で見たくなります。
しかし探究では、まず立場が割れる理由を構造として整理します。
国際関係で大切なのは、
- だれが何を守りたいのか(利益)
- だれが何を大切にしているのか(価値観)
- どんなルールや枠組みがあるのか(制度)
- だれが影響力を持っているのか(力関係)
を、感情ではなく言語化して説明できることです。
そこでEEでは、探究の流れを次の2ステップに整理しています。
■ EE式:問いを作る2ステップ構造
- Step1:気づき → 問い(RQ入り口3型)
- Step2:問い → 結論(RQ出口4型)
この2つがつながると、誰でも深い探究ができます。
1. EE式 RQ入り口3型(国際関係版)
国際関係の問いは、次の3つの入り口から生まれます。
① 対立・分断発見型(なぜ割れるのか)
「同じ問題なのに、なぜ立場が割れるのか?」
国・地域・集団の意見が対立する理由を、利益や歴史から探る入り口です。
② 協力・合意形成型(どうすれば協力できるのか)
「どうすれば、協力や合意は成立するのか?」
国際機関・条約・支援の仕組みなど、協力の条件を考える入り口です。
③ ルール・制度設計型(世界はどう運営されているのか)
「世界のルールは、誰がどう決めているのか?」
貿易・安全保障・環境・AIなど、ルールづくりの構造を読む入り口です。
- 対立・分断発見型:なぜ割れるのか
- 協力・合意形成型:どうすれば協力できるのか
- ルール・制度設計型:世界はどう運営されているのか
- 比較型:AとBはどう違う?
- 相関型:AとBはどれくらい関係?
- 因果型:なぜそうなる?
- 構造型:どんな仕組み・構造?
2. EE式 RQ出口4型(国際関係版)
入り口の気づきを、分析できる問いに変換する4つの型です。
国際関係では、出来事を「意見」で終わらせず、説明できる問いにすることが重要です。
- 比較型:国・地域・政策を比べて違いを読む
- 相関型:データ同士の関係から傾向をつかむ
- 因果型:なぜその結果が起きるのかを説明する
- 構造型:複数要因の組み合わせとして全体像を読む
3. 国際関係 × 探究RQ20選(比較・相関・因果・構造)
ここでは、国際関係の代表テーマを使って、
比較/相関/因果/構造の4型で20問を紹介します。
🔵【比較型】
- 同じ紛争でも、国際社会が「強く介入するケース」と「介入が弱いケース」は何が違うのか?
- 難民受け入れに積極的な国と消極的な国では、政策や世論にどんな違いがあるのか?
- 同じ感染症対策でも、国によって成功・失敗が分かれた理由は何か?
- 気候変動対策に積極的な国と消極的な国では、産業構造やエネルギー事情にどんな差があるのか?
- 貿易自由化を進めた国と保護主義を強めた国では、国内産業にどんな影響の違いが出たのか?
🟢【相関型】
- 経済格差(所得格差)と、社会不安・暴力の増加には相関があるのか?
- 教育水準と、民主主義の安定度には関係が見られるのか?
- 若年失業率と、政治的な過激化(分断の拡大)には相関があるのか?
- 食料価格の上昇と、抗議活動や政情不安の発生には関係があるのか?
- エネルギー輸入依存度と、外交姿勢(強硬/慎重)には関係があるのか?
🟠【因果型】
- なぜ国際協力は、危機のときほど難しくなるのか?
- なぜ制裁(経済制裁)は効く場合と効かない場合があるのか?
- なぜ一部の地域では、紛争が「長期化」しやすいのか?
- なぜSNSや情報環境の変化は、国際的な対立や分断を強めやすいのか?
- なぜ国際ルール(条約・合意)は守られないことがあるのか?
🔴【構造型】
- 国際社会の「秩序」は、どんな力関係(軍事・経済・同盟)の組み合わせで成り立っているのか?
- 難民問題は、戦争・経済・気候変動・政治のどんな組み合わせで生まれているのか?
- 気候変動対策が進まないのは、産業・政治・国益のどんな構造があるからか?
- 国際協力の成功には、制度・資金・信頼のどんな条件の組み合わせが必要なのか?
- 「世界のルールづくり」は、国家・企業・市民社会のどんな関係で動いているのか?
4. 探究 → 志望理由書・学部選びにつなげる
国際関係の探究は、
「世界の出来事を、自分の言葉で構造的に説明できる力」を育てます。
これは志望理由書・面接で、次のような強みとして語れます。
- 多面的に見る力(立場・利益・価値観を分けて整理できる)
- 根拠で語る力(データや事例にもとづいて説明できる)
- 構造化する力(原因を単純化せず、要因の組み合わせで語れる)
- 合意形成の視点(対立の中で協力条件を考えられる)
国際関係の探究は、次のような学部と深くつながります。
🎓 国際関係の探究がつながる主な学部(日本語/英語)
- 国際関係学部(International Relations)
- 国際政治・国際公共政策(International Politics / Public Policy)
- 国際協力・開発学(International Development / Cooperation)
- 地域研究(Area Studies)
- 法学部(国際法)(Law / International Law)
- 経済学部(国際経済)(Economics / International Economics)
「世界のニュースを、仕組みとして理解し、未来の選択につなげたい」
という探究は、志望理由とまっすぐにつながります。
5. まとめ
- 国際関係は、「対立」と「協力」を行き来する学問。
- EE式入り口3型で、対立・協力・ルール設計の視点から問いを見つけられる。
- 出口4型で、比較・相関・因果・構造として説明できる問いに変えられる。
- 探究経験は、国際系学部の志望理由書・面接で強みとして語れる。
国際関係の探究は、
「正しい意見を言うこと」ではなく、「なぜそうなるのかを説明できること」から始まります。
そしてその力は、世界を見る力であると同時に、
自分の将来を選ぶ力にもなっていきます。
◆ フィナーレ|EE式 探究シリーズ(全12分野)を読み終えたあなたへ
ここまで、EE式「探究シリーズ」全12分野を通して、
リサーチクエスチョン(RQ)を立て、深めるための考え方を見てきました。
経済・経営・心理・教育・社会・文化。
スポーツ科学・人間科学。
理工学・医学・環境科学。
国際関係。
扱う分野は違っても、
EE式の探究が見てきたものは、いつも共通しています。
「世界を、そのまま受け取らずに問い直すこと」
EE式では、どの分野でも共通して、
RQ入り口3型 × RQ出口4型を使い、
「問い」を考えやすい形に整理してきました。
- RQ入り口:どこに違和感があるのかに気づく
- RQ出口:比較・相関・因果・構造として問いを深める
探究とは、センスや思いつきではありません。
問いをつくり、考え続けるための「型」を身につけることです。
◆ 探究とは、「世界の見方」を手に入れること
このシリーズで扱った分野は、
それぞれ、世界の違う側面を照らしています。
- 医学・健康科学は、人のからだと「しんどさ」を見る
- 環境科学は、人を取り巻く条件を見る
- 理工学は、仕組みと設計を見る
- 国際関係は、人・社会・国家の関係を見る
でも、分野が違っても、問いの立て方は同じです。
- 「どこに違和感がある?」(RQ入り口)
- 「条件を変えると、何がどう違う?」(比較型)
- 「数値や量には、どんな関係がある?」(相関型)
- 「なぜ、その結果が生まれる?」(因果型)
- 「全体は、どんな組み合わせで成り立っている?」(構造型)
こうして世界を見る視点を持てたとき、
あなたはもう探究の入口に立っています。
このシリーズが、
あなた自身の問いを育て、
進路や学びを考えるときの思考の軸になれば幸いです。
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最後に:迷ったら相談してください
探究テーマや志望理由書で迷ったときは、いつでもご相談ください。
一緒に、“あなたの言葉”を形にしていきましょう。
- 「AIっぽい」文章になっていないかチェックしたい
- 体験をどう“本物の言葉”に変えるか迷っている
- 自分らしい声を取り戻したい
- 評価者に伝わる“人間味”の出し方を知りたい
これらを一緒に整理していきます。
AIが整える時代だからこそ、
整いすぎない“あなたの言葉”を見つける時間が大切です。
✔ 診断メニュー(まずは方向性だけでもOK)
- 探究テーマの方向性チェック
- 志望理由書の方向性チェック
- 体験の意味づけ整理
- 価値観(芯)の言語化
- ストーリー構成の診断
- AIとの使い分けアドバイス
まずは方向性チェックだけでもOK👇





