読書感想文では受からない? 立教大学文芸・思想専修の推薦入試を読み解く
推薦入試というと、
- 探究活動
- 留学経験
- コンテスト受賞
- 生徒会や課外活動
といった「実績」が重視されるイメージがあります。
そんな中、立教大学文学部文学科文芸・思想専修の自己推薦入試には、とても興味深い課題があります。
これまでに読んだ文芸書および哲学・学術書(新書を除く)を20冊以上挙げなさい。その上で、これらの読書を通じて何を考え、何を得てきたか、そして、読書を手がかりに入学後に何をどのように学びたいのかを、具体的な書名をあげて2000字程度で述べなさい。
初めてこの課題を見たとき、
「読書感想文のような入試なのだろうか?」
と思う人もいるかもしれません。
しかし、私たちはこの課題の本質は別のところにあるように感じています。
大学は何を見ようとしているのか
私たちは推薦入試を考えるとき、
まず受験生ではなく、
大学が何を見ようとしているのか
を考えるようにしています。
なぜなら、入試課題には大学の教育思想が表れているからです。
文学部やリベラルアーツ系の大学では、
本を読むことそのものが目的ではありません。
重要なのは、
本を読んで何を考えるのか
です。
大学のゼミでは、
原書や論文、文学作品を読みながら、
- 著者は何を主張しているのか
- 自分はどう考えるのか
- 他の見方はないのか
を議論します。
つまり大学が知りたいのは、
読書量ではなく、
本を手がかりに考える力
なのです。
この課題は、
「この受験生は大学での学びに必要な思考力の土台を持っているだろうか」
を見ようとしているように思えます。
読書感想文との決定的な違い
「読書感想文」と何が違うのか
もちろん、優れた読書感想文にも自分自身の体験や考えは登場します。
だから、この課題と読書感想文の違いは、「自分のことを書くかどうか」ではありません。
私たちが興味深いと感じるのは、この課題が
「どのような学問的関心を持つ人なのか」
を見ようとしているように思えることです。
例えば、同じ小説を読んでも、
ある人は「孤独」というテーマに惹かれるかもしれません。
ある人は「正義」について考えるかもしれません。
また別の人は、「なぜ人は他者を理解できないのか」という問いを抱くかもしれません。
大切なのは、その問いが一冊の本で終わらないことです。
気になったから次の本を読む。
別の考え方に出会う。
納得できなくてさらに考える。
そして少しずつ、
自分なりの問いが形になっていく。
私たちは、大学での学びとは本来そういうものだと思っています。
だから、この課題で大学が見ようとしているのは、
「何を読んだか」
だけではなく、
「どんな問いに取りつかれ、その問いを大学でどこまで追究したいと思っているのか」
なのではないでしょうか。
20冊の読書歴は、そのための材料です。
読書を通してどのような問題意識が生まれ、
どのような知的関心へと育ち、
それがどんな研究テーマにつながろうとしているのか。
私たちには、この課題が受験生の「知的な履歴書」を読もうとしているように見えるのです。
海外の大学にも似た考え方がある
実は、この発想は海外の大学でも珍しいものではありません。
例えば、オックスフォード大学やケンブリッジ大学では、
教科書以外にどのような本を読んできたかが重視されます。
面接では、
「なぜその本に興味を持ったのか」
「その本を読んでどのような疑問を持ったのか」
について深く問われることもあります。
また、アメリカのリベラルアーツ大学では、
古典を読み、議論する教育が重視されています。
そこでも重要なのは、
知識を覚えたかどうかではなく、
本を通してどのような問いを持ったのか
です。
立教大学のこの課題には、
そうしたリベラルアーツ教育に通じる発想を感じます。
実績がなくても戦える入試かもしれない
私たちは、この入試の最も興味深い点はここだと考えています。
推薦入試というと、
「全国大会」
「留学経験」
「生徒会長」
そんな華やかな実績がある人のための入試だと思われがちです。
もちろん、それらは素晴らしい経験です。
しかし世の中には、別のタイプの生徒もいます。
本を読むのが好きな人。
授業で出てきた問いについて、家に帰ってからも考えてしまう人。
ニュースを見て、「それって本当だろうか」と立ち止まる人。
誰かに見せるためではなく、自分の興味に従って黙々と考え続ける人。
そうした力は、実績としては見えません。
賞状にもなりません。
活動歴にも書きにくいかもしれません。
けれども、学問の出発点は本来そこにあるはずです。
立教大学文芸・思想専修が見ようとしているのは、
「何を達成したか」
だけではなく、
「何に引っかかり、何を問い、どう考えてきたか」
なのではないでしょうか。
もしそうだとしたら、この入試は実績自慢のための入試ではありません。
考えることが好きな人のための入試です。
派手な経験がなくてもいい。
ずっと気になっていた問いがある。
なぜだろうを考え続けてきた。
そんな人にこそ、一度じっくり読んでほしい募集要項だと私たちは感じました。
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🎓 【本記事の執筆・監修】
- 代表研究員:代表研究員:元早稲田大学准教授・教育工学博士(米スタンフォード大・オレゴン大修士 / 東工大博士)
- 顧 問:大学名誉教授(コミュニケーション学専門)
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