「わかる」と「よくする」を行き来する学問(高校生向け・理工学編)
EE式 RQ入り口3型 × RQ出口4型で“しくみを理解し、よりよく設計する”
■ はじめに
理工学は、「わかる」と「よくする」を行き来する学問です。
まず、「どうなっているのか」を理解する。
そして、「どうすれば、もっと良くなるか」を考える。
この往復こそが、理工学の学びの中心にあります。
スマホがつながる仕組み。
電車が安全に走る仕組み。
エアコンが部屋を快適に保つ仕組み。
信号機やエレベーターが、当たり前に動く仕組み。
理工学に興味がある人は、ものづくり番組や科学番組を見ていて、
- なぜ、この形なんだろう?
- どうして、こうすると上手くいくんだろう?
- もっとムダを減らせないかな?
と考えたことがあるかもしれません。
つまり理工学は、
「どうなっているかを理解する力」と
「どうすれば良くなるかを考える力」
を行き来する学問なのです。

◆ 理工学は「公式を覚える学問」ではない
理工学というと、数式や公式、プログラミングなど、
「難しそう」というイメージを持つ人も多いかもしれません。
でも本当に大切なのは、公式そのものではありません。
- なぜ、この仕組みはうまく動いているのか?
- どこにムダやロスがあるのか?
- 条件を変えると、結果はどう変わるのか?
理解 → 改善 → さらに理解
この循環こそが、理工学の思考です。
そこでEEでは、探究の流れを次の2ステップに整理しています。
■ EE式:問いを作る2ステップ構造
- Step1:気づき → 問い(RQ入り口3型)
- Step2:問い → 結論(RQ出口4型)
この2つがつながると、誰でも深い探究ができます。
1. EE式 RQ入り口3型(理工学編)
理工学の探究は、次の3つの入り口から始まります。
① 仕組み・構造発見型
「これは、どんな仕組みで動いているのか?」
部品・構造・流れを整理し、まず“わかる”状態をつくる入り口です。
② 性能・効率改善型
「どうすれば、もっと良くできるのか?」
時間・エネルギー・安全性・コストの改善を考える入り口です。
③ 社会実装・応用設計型
「この仕組みは、社会でどう役立つのか?」
実際の利用場面まで考える、理工学らしい入り口です。
- 仕組み・構造発見型 :これは、どんな仕組みで動いているのか?
- 性能・効率改善型:どうすれば、もっと良くできるのか?
- 社会実装・応用設計型:この仕組みは、社会でどう役立つのか?
- 比較型:AとBはどう違う?
- 相関型:AとBはどれくらい関係?
- 因果型:なぜそうなる?
- 構造型:どんな仕組み・構造?
2. EE式 RQ出口4型(理工学編)
理工学の探究では、
「気づき」をそのまま終わらせず、分析できる問いに変えることが重要です。
EE式では、理工学の問いを次の4つの「出口型」に整理します。
この型を使うことで、感覚的な疑問を、説明・検証・設計につながる問いへと発展させることができます。
- 比較型:条件や設計を比べて、「何がどう違うのか」を明らかにする
- 相関型:数値や性能の関係を調べ、「どの要素が影響しているか」を探る
- 因果型:仕組みや原理に注目し、「なぜその結果が生まれるのか」を説明する
- 構造型:部品・工程・人・環境の組み合わせから、「全体はどう成り立っているか」を読み解く
理工学の探究では、
1つの問いが、複数の出口型を行き来することも珍しくありません。
たとえば、
「なぜ効率が下がるのか(因果)」を考えながら、
「条件を変えるとどう違うか(比較)」を調べ、
「全体の設計を見直す(構造)」へ進んでいく。
この行き来そのものが、理工学的思考です。
3. 理工学 × 探究RQ20選(理工学編)
ここでは、理工学の代表的な4分野について、
身近なテーマから考えられる探究RQを20問紹介します。
それぞれの問いには、EE式RQ出口4型(比較・相関・因果・構造)の視点を付けています。
🟦 情報・データ・AI系(6)
- スマホの通知頻度は、集中力や作業効率にどのような影響を与えているのか?(比較/相関)
- 同じ情報でも、表示方法(文字・図・色)によって理解度はどう変わるのか?(比較)
- AIの画像認識は、どの条件で精度が下がりやすいのか?(因果)
- 学校の時間割や提出物管理を最適化すると、ムダな作業時間はどれくらい減らせるのか?(構造)
- データ量が増えると、処理時間やエラー率はどのように変化するのか?(相関/因果)
- 人が「使いやすい」と感じるアプリの構造には、どんな共通点があるのか?(構造)
🟩 機械・システム・ロボット系(5)
- 同じ目的の装置でも、構造の違いによって効率や安全性はどう変わるのか?(比較)
- なぜ機械は、特定の場所から故障しやすいのか?(因果)
- 摩擦や振動を減らすと、装置の寿命や性能はどの程度向上するのか?(相関)
- 人の動きをまねたロボット構造は、どんな利点と限界を持つのか?(比較/構造)
- 日常で使われている機械は、どのような安全設計の組み合わせで成り立っているのか?(構造)
🟨 材料・化学・物性系(4)
- 同じ用途でも、材料の違いによって強度・重さ・耐久性はどう変わるのか?(比較)
- 温度や湿度の変化は、材料の性質にどのような影響を与えるのか?(因果)
- 軽くて丈夫な材料には、どんな構造的特徴があるのか?(構造)
- リサイクル材料と新品材料では、性能やコストにどのような差があるのか?(比較/相関)
🟥 エネルギー・環境工学系(5)
- 家庭内のエネルギー消費は、どの行動によって最も左右されているのか?(構造)
- 断熱性能を高めると、冷暖房エネルギーはどの程度削減できるのか?(相関)
- 再生可能エネルギーは、どんな条件下で最も効率よく使えるのか?(比較/因果)
- エネルギーの「つくる・ためる・使う」は、どんなバランスで最適化できるのか?(構造)
- 技術の選択によって、CO₂排出量やコストはどう変わるのか?(比較/相関)
4. 探究 → 志望理由書・学部選び
理工学の探究を通して見えてくるのは、
「答えを覚える力」ではなく、「仕組みを理解し、よりよく考え直す力」です。
たとえば、
- なぜうまく動いているのかを分解して考える
- どこにムダや課題があるのかを見つける
- 条件を変えたら結果はどう変わるかを試す
- 全体として、より良い仕組みに組み直す
こうした思考の積み重ねが、理工学の探究です。
この経験は、そのまま志望理由書や面接で語れる強みになります。
たとえば、次のような一文につながります。
理工学の探究を通して、
「仕組みを理解すること」と「より良く設計し直すこと」は、
別ではなく、連続した思考であると気づきました。
この一文は、
「なぜ理工学を学びたいのか」を、具体的な思考経験として伝えられる表現です。
理工学の探究は、次のような学部・学科と強くつながります。
- 理工学部・工学部
- 情報科学・情報工学系
- 機械工学・電気電子工学系
- 材料工学・応用化学系
- エネルギー・環境工学系
「身の回りの仕組みを理解し、より良くしたい」という関心は、
そのまま将来の学びや研究テーマへとつながっていきます。
5. まとめ
- 理工学は、「わかる」と「よくする」を行き来する学問。
- 身の回りの仕組みそのものが、探究の出発点になる。
- 比較・相関・因果・構造の視点で、問いを深められる。
- 探究の経験は、志望理由書や進路選択の軸になる。
理工学は、
世界をそのまま受け取る学問ではありません。
「なぜ、こうなっているのか?」と立ち止まり、
「どうすれば、もっと良くできるか?」を考え続ける。
その積み重ねが、
社会を支える技術や仕組みを生み出してきました。
理工学の探究は、
未来の社会を、少しずつ設計し直していく学びでもあります。
🔔 次回予告|国際関係編
「世界で起きていることは、本当に“遠い国の話”なのでしょうか?」
戦争、難民、貿易摩擦、国際協力、環境問題、感染症、AIの国際ルール…。
ニュースで毎日のように耳にする国際問題。
でもそれは、
私たちの生活・進路・将来の選択と、確実につながっています。
国際関係の探究は、
- なぜ国と国の対立は生まれるのか
- なぜ協力できる場合と、できない場合があるのか
- 世界のルールは、誰がどのように決めているのか
を、
感情や印象ではなく、「構造」と「関係性」から読み解く学問です。
次回は、EE式RQ入り口3型 × RQ出口4型を使って、
- 国際関係の探究は、どこから始めればよいのか
- 高校生の身近な疑問を、どう世界につなげるのか
- 国際系学部・志望理由書にどう結びつくのか
を、具体例つきで整理します。
次回:
「国際関係は、“世界のニュース”ではなく“関係の科学”である」
あわせて読みたい!
最後に:迷ったら相談してください
探究テーマや志望理由書で迷ったときは、いつでもご相談ください。
一緒に、“あなたの言葉”を形にしていきましょう。
- 「AIっぽい」文章になっていないかチェックしたい
- 体験をどう“本物の言葉”に変えるか迷っている
- 自分らしい声を取り戻したい
- 評価者に伝わる“人間味”の出し方を知りたい
これらを一緒に整理していきます。
AIが整える時代だからこそ、
整いすぎない“あなたの言葉”を見つける時間が大切です。
✔ 診断メニュー(まずは方向性だけでもOK)
- 探究テーマの方向性チェック
- 志望理由書の方向性チェック
- 体験の意味づけ整理
- 価値観(芯)の言語化
- ストーリー構成の診断
- AIとの使い分けアドバイス
まずは方向性チェックだけでもOK👇





