「誰かの“しんどさ”を減らす研究」(高校生向け・医学・健康科学編)
EE式 RQ入り口3型 × RQ出口4型で “からだと健康” を読み解く
■ はじめに
「誰かの“しんどさ”をどうすれば減らせるのか?」
この問いこそが、医学・健康科学の中心にあるテーマです。
同じ学校生活・同じ部活・同じ受験勉強をしていても、私たちの身体は不思議なほど違いを見せます。
- 同じくらい眠っているのに、朝から元気な人と、だるさが抜けない人がいる。
- 同じ部活メニューでも、ケガが多い人とほとんどしない人がいる。
- テストのストレスで、眠れなくなる人と、ぐっすり眠れる人がいる。
- 季節の変わり目でも、頭痛が出る人と、まったく平気な人がいる。
- 受験勉強中、食欲がなくなる人と、逆に食べすぎてしまう人がいる。
こうした差を、
- 「気のせい」
- 「体が弱いだけ」
- 「根性が足りない」
と片づけるのは、もう時代遅れです。
医学・健康科学(Medical & Health Sciences)は、
なぜ同じように生活しているのに“違う結果”が生まれるのか?
その理由を科学的に読み解く学問です。
◆ 4つの要因が“組み合わさって”人の状態をつくる
医学・健康科学のポイントは、
1つの原因だけで体調や不調を説明しないこと。
私たちの身体は、次の4つがかみ合って動いています。
- からだの要因(体質・免疫・ホルモン・筋力)
- 生活習慣(睡眠・食事・運動・スマホ時間)
- 環境(学校・家庭・気温・音・光)
- メンタル(ストレス・不安・物事の捉え方)
重要なのは、これらを バラバラではなく“組み合わせ”としてとらえること。
たとえば、「疲れやすい」という一つの状況でも、
- 睡眠不足 × スマホ時間
- ホルモンバランス × ストレス
- 運動不足 × 教室環境
- 体質 × 季節の変わり目
など、複数の要因が重なって起きています。
◆ “しんどくなりにくい暮らし”をつくる学問
医学・健康科学は、病気を見つけて治すだけではありません。
そもそも“しんどくなりにくい状態”をどう作るか。
この視点が、今もっとも注目されています。
日常の「なんとなく不調」「理由のわからないつらさ」は、
そのまま探究テーマになります。
この4つを「バラバラに見る」のではなく、
“組み合わせ”としてとらえるところにあります。
そこでEEでは、探究の流れを次の2ステップに整理しています。
■ EE式:問いを作る2ステップ構造
- Step1:気づき → 問い(RQ入り口3型)
- Step2:問い → 結論(RQ出口4型)
この2つがつながると、誰でも深い探究ができます。
1. EE式 RQ入り口3型(医学・健康科学版)
医学・健康科学の問いは、次の3つの入り口から生まれます。
「からだと健康」を扱う分野なので、EE式入り口3型も医学・健康科学専用にアレンジしています。
① 症状・差異発見型(同じ生活なのに違う)
「同じように過ごしているのに、なぜこの人だけ不調が出やすいのか?」
・同じクラスなのに、頭痛・腹痛が多い人/ほとんどない人
・同じ練習量なのに、ケガが多い人/少ない人
・同じ睡眠時間でも、スッキリ起きられる人/起きられない人
症状や体調の「個人差」に気づくところから始まる入り口です。
② メカニズム発見型(からだのしくみを追う)
「どんなプロセスで、不調・回復・成長が起きているのか?」
・ストレスが胃や頭痛として出るまでの流れ
・睡眠不足が集中力や記憶力を下げるプロセス
・ケガから回復していくときの身体の変化
目に見えにくい“中身のプロセス”を追う入り口です。
③ 予防・環境設計型(不調を減らす)
「どんな生活や環境なら、“しんどさ”を減らせるのか?」
・睡眠・食事・運動の整え方を変えると、体調はどう変わる?
・教室の明るさや騒音を工夫すると、頭痛は減る?
・スマホとの付き合い方を変えると、睡眠の質は上がる?
「悪くなってから治す」だけでなく、「悪くなりにくい環境をデザインする」視点を持つ入り口です。
- 症状・差異発見型 :同じ生活なのに違う
- メカニズム発見型:からだのしくみを追う
- 予防・環境設計型:不調を減らす
- 比較型:AとBはどう違う?
- 相関型:AとBはどれくらい関係?
- 因果型:なぜそうなる?
- 構造型:どんな仕組み・構造?
2. EE式 RQ出口4型(医学・健康科学版)
入り口の気づきを、“分析できる問い”に変換する型です。
🔵 比較型
タイプAとタイプBを比べて、「どこがどう違うのか」を読む。
例:
・朝型の生徒と夜型の生徒では、日中の眠気や集中力にどのような違いがあるのか?
・運動習慣がある生徒とほとんど運動しない生徒では、ストレスの感じ方に差はあるのか?
🟢 相関型
生活習慣や環境と、「健康状態・不調」との関係を見る。
例:
・スマホの使用時間と睡眠の質にはどのような相関があるのか?
・一日の歩数とストレスレベルには関係が見られるのか?
🟠 因果型
「なぜその不調/改善が起きるのか?」という理由(因果)を読む。
例:
・なぜ徹夜をすると、判断ミスやケアレスミスが増えるのか?
・なぜ定期的な運動は、メンタルの安定や睡眠の質を高めるのか?
🔴 構造型
「不調/健康」を生み出す仕組み・サイクルを読む。
例:
・「疲れが取れない生活サイクル」は、どのような行動・習慣の組み合わせでできているのか?
・健康習慣が続いている生徒の一日の構造はどうなっているのか?
3. 医学・健康科学 × 探究RQ20選(比較/相関/因果/構造)
医学・健康科学は、
「自分や身近な人のからだ・体調」をテーマにできるのが大きな特徴です。
🔵【比較型】
- 朝型の生徒と夜型の生徒では、日中の眠気・集中力・ミスの頻度にどのような違いがあるのか?
- 日常的に運動している生徒と、ほとんど運動しない生徒では、ストレス耐性や気分の安定にどのような差があるのか?
- 朝食をとる習慣がある日と、とらない日で、授業中の集中度や眠気はどう変わるのか?
- 就寝前にスマホを長時間見る生徒と、ほとんど見ない生徒では、睡眠の質にどのような違いがあるのか?
- 部活動に参加している生徒と参加していない生徒では、体力・疲労感・メンタルの状態にどのような差があるのか?
🟢【相関型】
- 一日の平均睡眠時間と、日中の眠気の強さにはどのような相関があるのか?
- 一日の歩数と、ストレスレベルや気分の安定度には関係が見られるのか?
- 炭酸飲料や甘い飲み物を飲む頻度と、だるさ・頭痛・眠気の頻度にはどのような相関があるのか?
- スクリーンタイム(スマホ・タブレットの使用時間)と、肩こり・頭痛・目の疲れにはどのような関係があるのか?
- 朝食の栄養バランス(たんぱく質・炭水化物など)と、午前中の集中度の自己評価には相関があるのか?
🟠【因果型】
- なぜ徹夜や睡眠不足になると、判断ミスやケアレスミスが増えるのか?
- なぜ長時間座りっぱなしの生活は、腰痛・肩こり・頭痛を引き起こしやすいのか?
- なぜ定期的な運動は、メンタルの安定や睡眠の質の向上につながるのか?
- なぜテスト前になると、お腹が痛くなったり気持ち悪くなったりする生徒がいるのか?
- なぜ同じストレスでも、胃にくる人・頭痛になる人・眠れなくなる人など、症状の出方が人によって違うのか?
🔴【構造型】
- 「疲れが取れない生活サイクル」は、どのような行動・習慣の組み合わせ(睡眠・食事・スマホ・勉強量など)でできているのか?
- 健康習慣(適度な運動・十分な睡眠・バランスの良い食事)が続いている生徒の一日の構造はどうなっているのか?
- 「頭痛や腹痛が出にくい生活パターン」は、どのような要素(生活リズム・ストレス対処・環境調整)が組み合わさっているのか?
- 学校全体で睡眠・運動・食事を大切にする文化があるとき、生徒の健康状態はどのような構造で変化していくのか?
- 地域(学校・家庭・医療機関・自治体)が連携して子どもの健康を支える仕組みは、どのような構造で成り立っているのか?
4. 探究 → 志望理由書・学部選びにつなげる
医学・健康科学の探究は、大学が重視する次のような力を育てます。
- 健康リテラシー(からだの情報やデータを理解し、自分の言葉で説明できる力)
- 観察力・記録力(体調や生活習慣の変化を丁寧に記録・分析する力)
- 予防の発想力(「悪くなってから」だけでなく、「悪くならないように」を考える力)
- 仮説検証力(生活を少し変えてみて、体調の変化を確かめる“小さな実験”を組み立てる力)
- 協働・チームの視点(医療者だけでなく、家族・学校・地域と協力して健康を支える視点)
これらはすべて、
志望理由書・自己PR・面接で強みとして語りやすい要素です。
医学・健康科学の探究は、次のような学部と深くつながります。
🎓 医学・健康科学の探究がつながる主な学部(日本語/英語)
- 医学部(Medicine)
- 保健学部・医療技術学部(Health Sciences / Medical Technology)
- 看護学部(Nursing)
- リハビリテーション系(Physical / Occupational Therapy など)
- 栄養学部(Nutrition / Dietetics)
- 公衆衛生・健康政策(Public Health / Health Policy)
- スポーツ・健康科学部(Sports & Health Sciences)
- 心理学部(Clinical / Health Psychology)
「誰かの“しんどさ”を減らしたい」という思いを持って健康を探究した経験は、
「なぜその学部で学びたいのか」「将来どんな人を支えたいのか」
という志望理由と、まっすぐにつながります。
5. まとめ
- 医学・健康科学は、「同じ生活でも体調や不調が違う理由」を探る学問。
- EE式入り口3型で、症状の差・からだのしくみ・予防と環境設計から問いを見つけられる。
- 出口4型で、比較・相関・因果・構造として分析できる問いに変えられる。
- 自分や身近な人の体調・不調をテーマにできるので、探究が「自分と周りの健康」と直結しやすい。
- 探究で得た気づきは、そのまま医療・健康系の志望理由書・自己PR・将来像の土台になる。
医学・健康科学は、
「体調不良や不調は、その人の弱さのせい」
と考えるのではなく、
「どんな条件が重なって、その人の“しんどさ”が生まれているのか」
を読み解くための学びです。
そして、
・どんな生活や環境が、人を疲れさせているのか?
・どんな関わり方なら、周りの人の負担を軽くできるのか?
・どんな学び方・働き方なら、健康を守りながら力を発揮できるのか?
を探究することで、
「誰かのしんどさを減らす選択肢」を増やしていく分野でもあります。
6. 次回予告(環境科学編)
医学・健康科学編では、
「からだ × 心 × 生活習慣 × 環境」の組み合わせから、人の健康と不調を見てきました。
次の 環境科学編 では、
- なぜ地球環境の変化が、私たちの健康や暮らしに影響するのか?
- 身の回りの空気・水・音・温度は、どのように私たちの身体に関わっているのか?
- 「持続可能な社会」をつくるために、私たちは何を選び、どう行動できるのか?
といった視点から、
「地球・環境と人間の関係」を理系寄りに深く探究する世界へと進んでいきます。
身近な空気・水・エネルギーから、地球全体の気候変動まで。
環境科学というレンズで見ると、世界はどう違って見えるのか。
次回もどうぞお楽しみに。
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最後に:迷ったら相談してください
探究テーマや志望理由書で迷ったときは、いつでもご相談ください。
一緒に、“あなたの言葉”を形にしていきましょう。
- 「AIっぽい」文章になっていないかチェックしたい
- 体験をどう“本物の言葉”に変えるか迷っている
- 自分らしい声を取り戻したい
- 評価者に伝わる“人間味”の出し方を知りたい
これらを一緒に整理していきます。
AIが整える時代だからこそ、
整いすぎない“あなたの言葉”を見つける時間が大切です。
✔ 診断メニュー(まずは方向性だけでもOK)
- 探究テーマの方向性チェック
- 志望理由書の方向性チェック
- 体験の意味づけ整理
- 価値観(芯)の言語化
- ストーリー構成の診断
- AIとの使い分けアドバイス
まずは方向性チェックだけでもOK👇





