探究学習に潜む「見えにくい不平等」から考える
神﨑史彦さん(スタディサプリ講師:総合型選抜・小論文・探究)の記事から始める“探究の不平等”の話
1 はじめに
探究学習がスタートして数年。
「探究って正直しんどい…」
「問いなんて出てこない」
「みんなが順調に見えて、自分だけつまずいている気がする」
そんな声を、私はこれまで多く聞いてきました。
でも、それは あなたの努力不足ではありません。
探究には、そもそも 「最初から不平等が生まれやすい構造」 があるからです。
この“見えにくい不平等”を鋭く言語化しているのが、
教育分野で発信を続ける 神﨑史彦さん のこの記事です。
この記事は、探究学習に潜む“構造的な不平等”をとてもクリアに説明しています。
2 探究は“語れる子”が有利になりがち
神﨑さんは、探究学習の美しい理念の裏側に、
語れる・まとめられる生徒だけが得する構造があると指摘しています。
探究では
- 自分の興味を言葉にする
- 他者と意見交換する
- 恥ずかしさを乗り越えて発表する
といった 「語りの力」 が前提になりがち。
しかしこれは、
家庭環境・語彙量・自己肯定感・経験量に大きく左右されます。
つまり、
“語れる子”だけが、スタートラインで前に立つ。
これが探究の隠れた不平等です。
3 「沈黙=主体性がない」ではない
探究で誤解されやすいポイントがあります。
沈黙は「やる気がない」でも「能力が低い」でもない。
多くの場合は、
- 言語化の方法を知らない
- 問いの作り方を学んでいない
- 比較の視点が育っていない
など、スキルの問題でしかありません。
しかし学校現場ではその沈黙を「主体性の欠如」と誤解されてしまう。
ここにも不平等が潜んでいます。
4 「探究=絶対善」という空気の危うさ
探究がうまくできない生徒が
「自分は向いていないのでは…」
と感じてしまうのは自然なことです。
しかし神﨑さんはこう言います。
探究は万能ではない。
合う・合わないがあるのは当然だ。
探究が得意に見える生徒だけを「主体的」と評価し、
苦手な生徒を「遅れている」と見る構造そのものが問題なのです。
5 私が強く共感する理由
私は大学で長く、
初年次教育やコミュニケーション教育に携わってきました。
そこで実感したことは、
探究は“研究の土台”であり、本質的には大学レベルの営みだということ。
ゴールが曖昧で、
正解がなくて、
途中で考え方が変わり、
自分で言葉を作らなければいけない。
これは、
従来の「正解のある世界」=日本型グライダー教育とは
根本的に違います。
※詳しくはEEのブログを! →🔗 「なぜ大学は探究学習を重視するのか?」
だからこそ、
探究に“合わない”生徒が一定数いるのは、完全に自然なこと。
探究をしんどいと思うのは、あなたの弱さではない。
6 では、「探究が合わない」生徒はどうすればいい?
ここから先は、
「探究が合わない?! – Episodes」として、
ひとつずつ深掘りしていきます。
- Episode 1:探究がつらい理由は何か
- Episode 2:「合わない」は才能の問題ではない
- Episode 3:探究には“3つの入口”がある
- Episode 4:別の学び方で伸びる生徒も多い
- Episode 5:探究が合わない=弱い、ではない
そのことを、分かりやすく紐解いていきます。
■ 次回予告
Episode 1
探究がつらい理由は何か
問いが出ない。
話せない。
周りと比べて落ち込む。
その「つらさ」は、どこから生まれるのか。
感情ではなく、構造から整理します。
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