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探究学習の深化:オープン・インクワイアリー型学習の可能性


探究学習に関する海外の研究論文を読んでいると、「オープン・インクワイアリー型学習(Open Inquiry-Based Learning)」として紹介されることがあります。これは、探究学習の一形態として位置づけられ、学習者の主体性を最大限に引き出すスタイルです。探究学習について深く考えていくために、今回は、この「オープン・インクワイアリー型学習」を掘り下げて考えてみたいと思います。今回の記事は教育者目線の内容が少しだけ多くなります。

1.オープン・インクワイアリー型学習とは?

「オープン・インクワイアリー型学習」は、生徒の主体性を最大限に活かした学習スタイルです。以下のような特徴があります。

✔ 学びの主体は生徒自身
✔テーマ設定、仮説、手法、結果の分析まで生徒が自由に設計
✔ 「正解が1つではない」オープンエンドな問いを扱う

インクワイアリー型学習の4段階

段階特徴生徒の役割教師の役割
確認型 (Confirmation Inquiry)手順や結果が決まっている指示に従って実験指導者として関与
構造化型 (Structured Inquiry)手順は決まっているが、結果は生徒が考察仮説を立て、検証ガイド役
誘導型 (Guided Inquiry)問いと方法は決まっており、解決策を探る方法を工夫し、結果を分析支援者
オープン型 (Open Inquiry)問いも方法も生徒が設定研究者のように探究活動助言者や伴走者として関与

その中でも、「オープン・インクワイアリー型の学び」は最も主体性が求められる学習スタイルです。

2.探究学習とオープン・インクワイアリー型学習の違い

探究学習とオープン・インクワイアリー型学習は、どちらも「主体的に問いを立て、学びを深める」という点で共通していますが、いくつか違いがあります。

1. 定義と目的の違い

①探究学習とは?

  • 日本の教育カリキュラムで取り入れられた「主体的・対話的で深い学び」を実現するための教育手法
  • 「総合的な探究の時間」や「課題研究」の中で実施される
  • 教科横断的な視点や社会課題の解決が特徴

②オープン・インクワイアリー型学習とは?

  • インクワイアリ型学習の中でも、最も自由度の高い学びのスタイル
  • 学習者が「問いの設定」から「方法の選択」「結果の分析」まで全て主体的に行う

2.「課題研究型」と「オープン・インクワイアリー型」の違い

最近では、一口に「探究学習」と言っても「課題研究型」のようなものと、「オープン・インクワイアリー型」に近いものと様々です。「探究学習」に取り組むときは、「どのようなタイプの探究を求められている(求めている)のか?」ということまで、一度改めて考えてみる必要がありそうです。ここでは、「課題研究型探究学習」と「オープン・インクワイアリー型探究学習」に分けて比較して考えてみます。

項目課題研究型探究学習オープン・インクワイアリー型探究学習
目的問題解決や提案を目指す未解決の問いの追究や新たな発見を目指す
テーマ設定学校や教師が提示する場合が多い生徒が自由にテーマを設定
方法の決定教師の指導のもと、決まった方法で調査方法の選定から生徒が自由に決める
結果の評価成果物の完成度や実用性を重視探究のプロセスや思考の深さを重視
教師の関わり指導者として積極的にサポートファシリテーターとして見守る役割が中心

3.「オープン・インクワイアリー型実験コース」の実践事例

アメリカの高校で実践された「オープン・インクワイアリー型実験コース」の事例について述べた研究があります。(Spencer&Samsonau, Preparing Students for Authentic Research through Open-Inquiry Laboratory Courses. 2018)

1.コースの目的

  ✔科学的思考力:データ収集や分析の方法を理解し、自らの仮説を検証する力
  ✔問題解決力:計画通りにいかない状況でも試行錯誤し、別の方法を考案する力
  ✔主体性と創造性:研究の過程を通じて自分で考え、行動する力

2. 実施における課題

(1)教師が直面する課題 

  ✔学習設計の難しさ:生徒が探究を成功させるために適切な指導とサポートが必要
  ✔評価の難しさ:研究過程の工夫や試行錯誤のプロセスを評価に取り入れる工夫が求められる

(2)生徒が直面する課題

  ✔研究テーマの設定:適切な「問い」を立てるスキルの不足
  ✔不確実性への対応:「失敗」や「予想外の結果」に対する前向きな姿勢が重要

3. 実践におけるポイント

  • 段階的な指導の提供:最初から完全に自由に進めるのではなく、「仮説設定」「データ収集」「結果分析」などのスキルを段階的に指導
  • 生徒同士の協力促進:グループ活動を取り入れ、教師は「ファシリテーター」として支援
  • 成果の共有と発表:研究成果をレポート、プレゼンテーション、ポスター発表などで発表し、「どのように学び、考え、行動したのか」を重視

まとめ

「探究学習」が注目を浴びる中、探究学習自体が多様化しているため、「求められている探究について一度整理して考える」ということが「探究を極める近道」になりそうです。「オープン・インクワイアリー型の学び」は、学習者が自ら問いを立て、試行錯誤を繰り返しながら答えを探していくスタイルです。教師は「伴走者」として、生徒の主体性を引き出し、学びのプロセスを支える役割が求められます。

中高生のみなさん、探究学習は全般的に「誰かにフィードバックを求めるべき学習」です。もし皆さんが探究学習(とくにオープン・インクワイアリー型)を、最初から最後まで教員などのフィードバックなしにすべて一人でやりきった場合、これはもう「大学卒業レベル」です!大学の主なゴールは、指導教授や教官からフィードバックをもらいながら学位論文を完成させることなのですから。。

参考文献

  • Banchi, H., & Bell, R. (2008). The Many Levels of Inquiry: A Guide for Teachers. Science and Children, 46(2), 26-29.
  • National Research Council (2000). Inquiry and the National Science Education Standards: A Guide for Teaching and Learning. Washington, DC: National Academy Press.
  • Spencer, R. P., & Samsonau, S. V. (2018). Preparing Students for Authentic Research through Open-Inquiry Laboratory Courses. arXiv.org.

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