🧭 先生方の教室でも、こんなことはありませんか?
探究型の授業やグループワークを進めていると、次のような場面に出会うことはありませんか?
- 一部の生徒だけが活発に話し、他の生徒は聞き役にまわってしまう
- 実験や発表の場面で、男子が中心になり女子が記録係に固定される
- いつの間にか「役割」が決まってしまい、活動が形骸化する
実はこの問題、いま日本の中高で探究学習が広がるなかで、多くの先生が直面しています。そして同じ課題は、アメリカの大学でも以前から深く議論されてきたテーマです。
🌍 アメリカ大学での探究型授業改革
近年、アメリカの大学では「探究型(inquiry-based)」や「研究型(CURE: Course-based Undergraduate Research Experience)」と呼ばれる新しい授業スタイルが少しずつ広がっています。
講義で知識を伝えるだけでなく、学生自身が問いを立て、実験計画を考え、実際に研究に参加していくスタイルです。
特に、学部(Undergraduate)1〜2年生の実験授業を、従来の「手順をなぞる実験」から「探究・研究型のラボ」に転換する取り組みが進められています。
以下の論文は、その代表的なまとめです👇
👉 Inquiry-based and research-based laboratory education in undergraduate science(2008)論文へリンク
この論文では、多くの大学で探究・研究型ラボが導入され、学生の関心の高まりや学習効果の向上といった成果が示されています。
一方で、グループワークに伴う「役割の偏り」や「発言機会の不平等」といった課題も明確に指摘されています。
📚 Cohen理論が指摘していた本質
実は、このグループワークの不平等の問題は、30年以上前にすでに詳細に分析されていました。
教育社会学者 Elizabeth G. Cohen 教授による名著
『Groupwork: Strategies for the Heterogeneous Classroom』です。
Cohen教授は、グループ内で生徒の「ステータス(地位)」が非公式に形成されると、それが発言や役割分担の不平等につながり、学びの機会そのものに差を生み出すことを指摘しました。
そして、この不平等を防ぐための具体的な手法を提案しています👇
- 役割の明確化とローテーション(記録係・進行係などを交代する)
- 複数の能力が必要な課題設計(全員の貢献が必要な内容にする)
- 教員によるステータス問題への明示的な介入
- 成果の共同責任の仕組み作り(グループ全体での評価)
📝 私と Cohen 教授との出会い
私は大学院時代、スタンフォード大学で Cohen 教授のもとで修士論文の指導を受けました。
当時すでに名誉教授となられていた彼女のご自宅に毎週通い、論文執筆の指導を受けた日々は、今でも鮮明に覚えています。
Cohen教授の理論は、単なるテクニックではなく、「グループの中で一人ひとりがどう成長するか」という人間理解に根ざしたものでした。
探究型や協同学習の実践を考えるとき、私は必ず彼女の理論に立ち返ります。
🧪 現代の大学・高校探究への示唆
近年の大学の探究型授業(特に1〜2年生の理系実験)でも、Cohen 教授が指摘したのとまったく同じ問題が報告されています。
だからこそ、探究型にするほど、グループワークの構造化と教員のファシリテーションが重要になります。
高校の「総合的な探究の時間」でも、この原則はまったく同じです。
探究型学習の成否は、グループ内で「誰がどんな学びの機会を得られているか」にかかっています。
✨ まとめ
Cohen の理論は、時代と国境を越えて、今の探究教育にも深い示唆を与えてくれます。
探究を支えるのは、問いの深さだけでなく、グループワークの設計力です。
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